SUZUKI RACING REPORT
スズキレーシングレポート
MotoGP レースレポート
2022年11月6日
MotoGP 第20戦 バレンシアGP 決勝
スペイン サーキット・リカルド・トルモ
チームスズキエクスター最後のレース。リンスが優勝で有終の美を飾る。
2022年のMotoGP最終戦であると同時に、チームスズキエクスターにとって最後のレースとなったバレンシアGPにおいて、アレックス・リンスとジョアン・ミルは感動的で素晴らしい走りを披露した。

スタートから飛び出したリンスは1度もトップを譲ることなくスズキ最後となるレースで有終の美を飾った。また、12番グリッドからスタートしたミルは忍耐強く走り6位を獲得した。

8年間という短い参戦期間にも関わらず、チームは多くの素晴らしい仕事を成し遂げましたが、そのハイライトは2020年、ジョアン・ミルによるMotoGPワールドチャンピオンの獲得でした。2012年に最初のプロトタイプマシンを走らせた瞬間からチャンピオン獲得。そして最後のレースを優勝で飾ったこの瞬間までは決して平坦な道のりではありませんでしたが、ここで簡単にこの8年間を振り返ってみたいと思います。

2014
2014年のシーズンは2013年のオフィシャルMotoGPテストから始まりましたが、本格的に物事が進んでいくのは2014年のシーズンが始まってからでした。アレイシ・エスパルガロがチームに合流した初日、彼は「The Story Restarts」と文字入れされたヘルメットを被り、チームの目標も明確なものとなりました。

2015
フル参戦初年度となった2015年は、GSX-Rシリーズ生誕30周年でもありました。それを模したカラーリングを纏ったマシンで参戦したアレイシ・エスパルガロとマーベリック・ビニャーレスはいくつかのレースでトップ10フィニッシュを達成。シリーズランキング11位と12位を獲得しました。

2016
チームスズキエクスターにとっての初優勝は2016年のイギリスGP。マーベリック・ビニャーレスによって成し遂げられました。この勝利により、チームの勢いにも弾みがつきました。

2017
2017年はレギュラーライダーを刷新。アンドレア・イアンノーネとルーキー、アレックス・リンスを起用。順風満帆ではありませんでしたが、テストライダーであるシルバン・ギントーリ、津田拓也の尽力もあって幾度かの入賞を達成しました。

2018
2年目となるリンスはマシンを乗りこなしつつあり、アルゼンチンGPではクラス初表彰台を獲得。3度の2位を含む5度の表彰台を獲得。また、イアンノーネも4度の表彰台を獲得。チームはシーズン9度の表彰台を記録。

2019
アメリカズGPにおいて、リンスはクラス初優勝を達成。それにとどまらず、8月のシルバーストーンではチャンピオンライダー、マルク・マルケスとの激闘の末2勝目を獲得。また、才能あふれる若きスペイン・マヨルカ島出身ライダーのジョアン・ミルがチームに合流し、いくつかのレースで光る才能の片鱗を見せました。

2020
新型コロナウイルスによるパンデミックにより、MotoGPシリーズのスケジュールは大きな影響を受けました。そんな中でもチームは目標に向けて集中し続けました。シーズンの序盤ではいくつかのアップダウンもありましたが、シーズンが進むにつれてチームは存在感を示していきました。ミルはシーズンを通して安定した成績を残し、見事MotoGPワールドチャンピオンに輝きました。これはスズキにとって20年ぶりとなる最高峰クラスでの栄冠となり、スズキ創立100周年・レース活動60周年という記念すべき年に花を添えることに成功しました。またリンスもシリーズランキング3位となり、真の意味でのスズキの復活を世界の人々に印象付けました。

2021
チャンピオンチームとして迎えた2021年の目標は再び優勝を含む表彰台の獲得、そして出来る限りチャンピオンシップでの高いランキングを狙うことでした。この年は運に見放されたシーズンでもありましたが、チームは不屈の精神でチャンピオンシップに望みました。リンスにとっては厳しいシーズンとなりましたが、得意とするシルバーストーンでの2位獲得で士気を高めました。ミルは持ち前の安定性をこの年も披露し、6度の表彰台を獲得。ランキング3位でシーズンを終えました。

2022
チームスズキエクスター最後となる2022年のハイライトは、最終戦となるバレンシアGPにおけるリンスの劇的な優勝でしょう。これはこれまでハードに戦ってきたチームに対する最大の報酬と言えるでしょう。オーストラリアGPで激闘の末に獲得した優勝も感動的でしたが、今回はまた格別だったと言えるでしょう。ミルもまた、数々のレースで勇敢さと強さを披露しました。シーズンを通じて、全てのセッション。そして最後の瞬間まで、チームスズキエクスターは一丸となって戦いました。

佐原伸一 MotoGPプロジェクトリーダー
「2022年11月6日は今シーズン最終戦であると同時に、チームスズキエクスターにとって最後のMotoGPレースとなりました。2012年から2014年まで3年間の休止期間を経て2015年にMotoGPに復帰し、2016年にはイギリスGPで復帰後初優勝、2020年にはシリーズチャンピオン獲得と、まさに再起を果たすことができたのは、応援いただいたファンの皆さんの支えがあったからであると思っています。そして、このプロジェクトを共に作り上げ戦ってきた仲間にも感謝の言葉しかありません。ライダー、レース現場のスタッフ、浜松の開発陣も含めて、ファミリーという言葉が最も相応しいチームであったという自信と誇りを持っています。レース撤退に伴いこのチームが解散してしまうのは本当に寂しいことです。私自身、最終戦は泣かないつもりでいましたが、レースが終わりこのファミリーとの別れが現実のものになったときには、熱くこみ上げるものを止められませんでした。このプロジェクトの関係者それぞれが新しい未来に向かって力強く進んでくれることを望んでいます。最後にチームを応援してくださったファンの皆さんにお願いです。どうかこれからもMotoGPを観て、好きなライダーやチームを応援して盛り上げて下さい。本当にありがとうございました。」

リビオ・スッポ チームマネージャー
「これ以上、なにを望むことがあるでしょうか。もしもあるならば、2人がともに表彰台に登ることくらいだったでしょう。アレックスは今回もやってくれました。我々のマシンの、そして彼自身のポテンシャルを見事に証明してくれました。そしてジョアンも本当に頑張ってくれました。私が過ごしたスズキでの時間はとても短いものでしたが、非常に内容の濃いものでした。象徴的なブランド、そして素晴らしい人々と一緒にこのマシンを走らせたことは私にとって大きな喜びでした。本当にありがとうございました。」

河内 健 テクニカルマネージャー
「最後のレースで優勝という素晴らしい結果で有終の美を飾ることができました。撤退が決定されてからも諦めずに頑張ってくれたライダー、チーム、そして日本で開発してくれたみんなの努力の賜物だと思います。フィリップアイランドで優勝した時も言いましたが、今日の優勝で我々はまだまだ十分コンペティティブであることを証明できたと思います。撤退しなければいけないことは非常に残念でなりませんが、今まで応援してくださった皆さん、そしてこのプロジェクトに関わってくださった全ての皆さんに改めてお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。」

アレックス・リンス
「望んだ通りの結果を得ることが出来て本当に嬉しいよ。特にこの優勝は自分の地元でもあるだけでなく、スズキで最後のレースだったんだからとても特別なもので少し感傷的にもなってしまったよ。何年にも渡ってこのチームで走って来て、いくつかの優勝を達成できたと同時に、多くの素晴らしい時間をこの家族と一緒に分かち合ってきたんだ。みんなとお別れするのは本当に寂しいよ。この経験と思い出を糧として、これからのキャリアを戦っていきたいと思う。」

ジョアン・ミル
「スズキ最後となったレースで無事に6位完走出来たことは嬉しいよ。とくにこれまでの数レースはとてもタフなものだったからね。このチームでワールドチャンピオンになれたことは一生の思い出だよ。スズキと過ごした日々は、いつでも全身全霊で勝つために取り組んできた。それが2020年のタイトル獲得に繋がったんだ。協力してくれたチーム、全ての関係者の方たちに感謝の気持ちでいっぱいだね。」

MotoGP 第20戦 バレンシアGP 決勝結果
順位No.ライダーチーム名メーカータイム/トップ差
142アレックス・リンスTeam SUZUKI ECSTARSUZUKI41'22.250
233B・ビンダーRed Bull KTM Factory RacingKTM+0.396
389J・マルティンPrima Pramac RacingDUCATI+1.059
420F・クアルタラロMonster Energy Yamaha MotoGPYAMAHA+1.911
588M・オリベイラRed Bull KTM Factory RacingKTM+7.122
636ジョアン・ミルTeam SUZUKI ECSTARSUZUKI+7.735
710L・マリーニMooney VR46 Racing TeamDUCATI+8.524
823E・バスティアニーニGresini Racing MotoGPDUCATI+12.038
963F・バニャイアDucati Lenovo TeamDUCATI+14.441
1021F・モルビデリMonster Energy Yamaha MotoGPYAMAHA+14.676
1172M・ベツェッキMooney VR46 Racing TeamDUCATI+17.655
1225R・フェルナンデェスTech 3 KTM Factory RacingKTM+24.870
1387R・ガードナーTech 3 KTM Factory RacingKTM+26.546
1430中上 貴晶LCR Honda IDEMITSUHONDA+26.610
1549F・ディ・ジャンアントニオGresini Racing MotoGPDUCATI+31.819
1635C・クラッチローWithU Yamaha RNF MotoGP TeamYAMAHA+1'28.870
1773A・マルケスLCR Honda CASTROLHONDA1 lap
DNF43J・ミラーDucati Lenovo TeamDUCATI5 laps
DNF5J・ザルコPrima Pramac RacingDUCATI12 laps
DNF12M・ビニャーレスAprilia RacingAPRILIA12 laps
DNF93M・マルケスRepsol Honda TeamHONDA18 laps
DNF44P・エスパルガロRepsol Honda TeamHONDA23 laps
DNF40D・ビンダーWithU Yamaha RNF MotoGP TeamYAMAHA23 laps
DNF41A・エスパルガロAprilia RacingAPRILIA24 laps
MotoGP ライダーチャンピオンシップランキング(第20戦 バレンシアGP 終了時)
順位ゼッケンライダーマシンポイント
163F・バニャイアDUCATI265
220F・クアルタラロYAMAHA248
323E・バスティアニーニDUCATI219
441A・エスパルガロAPRILIA212
543J・ミラーDUCATI189
633B・ビンダーKTM188
742アレックス・リンスSUZUKI173
85J・ザルコDUCATI166
935J・マルティンDUCATI152
1088M・オリベイラKTM149
1112M・ビニャーレスAPRILIA122
1210L・マリーニDUCATI120
1393M・マルケスHONDA113
1472M・ベツェッキDUCATI111
1536ジョアン・ミルSUZUKI87
1644P・エスパルガロHONDA56
1773A・マルケスHONDA50
1830中上 貴晶HONDA48
1921F・モルビデリYAMAHA42
2049F・ディ・ジャンアントニオDUCATI24
214A・ドビツィオーゾYAMAHA15
2225R・フェルナンデェスKTM14
2387R・ガードナーKTM13
2440D・ビンダーYAMAHA12
2535C・クラッチローYAMAHA10
266S・ブラドルHONDA2
2751M・ピロDUCATI0
2832L・サバドーリAPRILIA0
2945長島 哲太HONDA0
309ダニーロ・ペトルッチSUZUKI0
3192渡辺 一樹SUZUKI0
MotoGP コンストラクターチャンピオンシップランキング(第20戦 バレンシアGP 終了時)
順位コンストラクターポイント
1DUCATI448
2YAMAHA256
3APRILIA248
4KTM240
5SUZUKI199
6HONDA155
MotoGP チームチャンピオンシップランキング(第20戦 バレンシアGP 終了時)
順位チームポイント
1Ducati Lenovo Team454
2Red Bull KTM Factory Racing337
3Aprilia Racing334
4Prima Pramac Racing318
5Monster Energy Yamaha MotoGP290
6Team SUZUKI ECSTAR260
7Gresini Racing MotoGP243
8Mooney VR46 Racing Team231
9Repsol Honda Team171
10LCR Honda98
11WithU Yamaha RNF MotoGP Team37
12Tech 3 KTM Factory Racing27