2022 FIM 世界耐久選手権 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第43回大会
2022年8月7日(日)
決勝レポート
鈴鹿8耐 決勝でスズキ勢が存在感を見せる。ヨシムラ SERT Motulが3位、S-PULSE DREAM RACING・ITECが4位
3年ぶりにFIM世界耐久選手権(EWC) 鈴鹿8時間耐久ロードレース第43回大会の決勝を迎えた日曜日。

8時30分から始まったウォームアップセッションは、夜中の降雨によるハーフウェットからはじまる難しいコンディションとなった。天気予報は曇りであるが、局地的な雨予報も出ており、どんな状況にも対応できるよう多くのチームは精力的に走り込み、決勝に備えた。スズキ勢は、FIM世界耐久選手権(EWC)のディフェンディングチャンピオンであり、現在もポイントランキングリーダーである#1 ヨシムラ SERT Motul(以下ヨシムラSERT)が5番手。#95 S-PULSE DREAM RACING・ITEC(以下エスパルス)が7番手。改造範囲の狭いSSTクラスに参戦する#52 TERAMOTO@J-TRIP Racing(以下TERAMOTO)が22番手、クラス5番手。#31 浜松チームタイタン(以下タイタン)が37番手、クラス9番手でウォームアップセッションを終える。

決勝前のオープニングセレモニーでは、スズキの元ファクトリーライダーで、MotoGPマシンの開発も長く担当し、鈴鹿8耐でも優勝経験がある青木宣篤の引退セレモニーが行われた。今大会を引退レースとし、TERAMOTOよりSSTクラスに参戦した。「最後のレースに特別な思いは?」との質問に「いつもと同じ。しっかり成績を狙って走りたい。」とコメントするが、多くのファンからの声援に思わず涙をこぼす場面も。「最後まで頑張るので声援をお願いします。」との言葉を残し、それぞれ世界GPで活躍した兄弟、次男の琢磨さん、三男の治親さんとともにコースを1周し多くのファンからの声援を受け、このあと始まる最後のレースに送り出された。

11時30分 に28,000人の観客が見守る中、45台のマシンが8時間後のチェッカーに向けてスタートを切った。

22番手グリッドからスタートしたヨシムラSERTのグレッグ・ブラックは抜群のスタートを決め、1周目ホームストレートを7番手で通過。さらに6番手まで順位を上げて前を追う。しかし2周目のスプーンカーブで上位2台が絡むクラッシュが発生し、いきなりセーフティーカーが入る。6周のセーフティーカー介入後、解除と同時にグレッグは4番手から猛プッシュし、ホームストレートに戻って来たときにはなんとトップとなっており、会場を沸かした。

また、オープニングラップを14番手で通過したエスパルスの津田拓也は徐々に順位をあげ、1回目のライダー交代までには6番手までジャンプアップする順調な滑り出しとなった。TERAMOTOの寺本幸司は13周目のシケインで転倒するが、すぐにコースに復帰しタイムロスを最小限にとどめた。

レーススタート2時間20分を経過する頃、デグナーカーブで転倒による車両火災が発生し、2度目のセーフティーカーが入る。この時点でヨシムラSERT4番手。エスパルスが5番手。SSTクラスはTERAMOTOが21番手、タイタンが22番手。それぞれクラス3番手、4番手と好位置につけた。

しかしレース再開後、タイタンのマシンにトラブルが発生。大きく順位を落としてしまう。

その後は各チーム安定した走行を続け、ヨシムラSERTが4番手。エスパルスが5番手。TERAMOTOがクラス3番手をキープした。

しかし残り1時間を切ったなか、EWCチャンピオンシップポイントランキング3番手で、それまで3番手を走行していた#7 YART - YAMAHA Official Team EWC(ヤマハ)が転倒。ヨシムラSERTがポジションを1つあげ、表彰台圏内に。また、エスパルスも4番手に浮上した。

そのままの順位で最後まで走りきり、ヨシムラSERT3位。エスパルス4位でチェッカーを受け、予選での雪辱を果たした。

この結果によりヨシムラSERTはチャンピオンシップポイントのリードを広げ、2番手の#5 F.C.C. TSR Honda France(ホンダ)に対し23ポイントのアドバンテージを持って最終戦ボルドール24時間レース(フランス)に挑むことになる。

なお、SSTクラス表彰台圏内を走行していたTERAMOTOはチェッカーフラッグ8分前に順位を落とし(総合18位・クラス4位)惜しくもSSTクラスの表彰台を逃した。また、途中トラブルのあったタイタンは規定周回数不足により完走扱いとはならなかったものの、最後まであきらめずに走り切り、39位でチェッカーを受けた。

PHOTO GALLERY
スズキファクトリーチーム「ヨシムラ SERT Motul」の鈴鹿8耐レースレポートはこちら
#95 S-PULSE DREAM RACING・ITEC 生形 秀之 選手
「苦しい状況もありましたが、チームが完璧な仕事をしてくれましたし、ライダーも頑張ってくれました。みんなで力を合わせて勝ち取った結果だと思います。もちろん3位表彰台は欲しかったですが、上位は自分たちよりも規模が大きなチームばかりでしたし、この状況のなかでは最高の結果だったと思います。サポートしてくださった皆様、有難うございました。」
#95 S-PULSE DREAM RACING・ITEC 渥美 心 選手
「24時間耐久レースを走った経験をもとに、しっかりバトンを渡すことを心がけて走りました。チームの皆さんが一生懸命仕事をしてくれたので、集中して良いペースで走ることが出来たと思います。今回このチームで走らせていただいて本当に感謝しています。過酷な状況でたくさん周回出来て、ライダーとしてもタフになったと思います。この経験を生かしてこれからも走っていきたいと思います。応援有難うございました。」
#95 S-PULSE DREAM RACING・ITEC 津田 拓也 選手
「スタートライダーを務めさせていただいたのですが、思った以上に周りが速いペースでした。第1スティントが大切だと分かっていたので、自分もプッシュしてライダー交代までに6番手に上がれていい流れに乗れたと思います。それからは皆がうまくつないでくれたので、終始良い順位をキープ出来ました。表彰台には登りたかったですが、自分達より上位はみんなファクトリーチームですから、プライベーターでこの順位は誇れるものだと思います。ここ最近、なかなか鈴鹿8耐ではいい流れに乗れなかったので、今回の結果は本当に良かったです。この調子で全日本も頑張ります。」
#52 TERAMOTO@J-TRIP Racing 寺本 幸司 選手
「ラスト8分で表彰台を逃したのは残念でした。自分がチームを引っ張って行かなければいけない立場だったのですが、路面温度の変化にマシンを合わせきることが出来ずにペースをあげられませんでした。ピットワークは素晴らしくて、セーフティーカーのタイミングも見計らって1スティント少なく出来たりとスタッフの仕事は最高でした。そのアドバンテージを守りきれなかったことはやっぱり悔しいです。宣篤さんの引退レースですから、表彰台に一緒に登りたかったです。」
#52 TERAMOTO@J-TRIP Racing 青木 宣篤 選手
「引退レースを良いチームで走らせてもらうことが出来たと思います。引退レースという、ただ僕が走るだけといったチームではなく、最高の結果を求めてレースをするという気持ちがみんな一緒だったことが嬉しかったです。ピットワークも素晴らしかったし、最後の1周までマシンの限界を求めて走ることが出来たのは皆さんのおかげです。最終ラップは夕暮れのなかだったのですが、タイヤが滑る感覚だとかコーナーでの挙動とか、この感覚をしっかり脳裏に焼き付けておこうと思いながら走っていました。ピットインしてクルーの姿をみたら、やっぱりこみ上げてくるものがありましたね。長いレース人生、良いときも悪いときもたくさん応援していただいたこと、本当に感謝しています。有難うございました。」
#52 TERAMOTO@J-TRIP Racing 津田 一磨 選手
「大先輩のお二人と一緒にレースできたことは、本当に良い経験となりました。宣篤さんの最後のレースだったこともあり、なんとか表彰台に登りたかったのですが力不足でした。自分の課題や足りないところも見えたレースだったので、これを糧に今後のレースにつなげていきたいです。全日本でこの悔しさをぶつけていきたいですし、鈴鹿8耐もリベンジしますので応援宜しくお願いします。」
#31 浜松チームタイタン 武田 数馬 選手
「タラレバではありますが、ライダー3人とも調子が良かっただけにトラブルが出てしまったのは残念でした。応援してくれた皆さん、スポンサーの方々に恩返しができなかったのが申し訳なかったです。ただ、そのなかでたくさんの学びがあったレースでもありました。今回、村瀬選手にチームに合流してもらって、走り方やセット等、いろいろと勉強になりました。この経験をいかしてチームのレベルアップとともに、ライダーとしても成長していきたいと思います。」
#31 浜松チームタイタン 屋代 原野 選手
「一時はリタイヤしなければならないかと思ったので、とりあえず再スタートしてチェッカーを受けることが出来て良かったです。チームが全力でトラブルを解決してくれて、一体感をすごく感じることが出来ました。「レースが好きだ!」がコンセプトのチームなのですが、それを再確認することが出来ました。いろいろと勉強になったことも多かったので、この経験を上手く活かしてこれからのレースを戦っていきたいと思います。」
#31 浜松チームタイタン 村瀬 健琉 選手
「怪我の状況が思ったよりも悪化しなかったので走ることを決めました。少しでもチームが上位に入れるようプッシュしましたが、トラブルが出てしまいました。もちろん残念な気持ちはありますが、スタッフが一生懸命復旧をしてくれて心強かったです。また、自分の要望もいろいろと聞いてくれてマシン造りもしてくれたことにも感謝しています。チームにプラスになってくれたら嬉しいですし、自分としてもライダーとして成長することが出来たと思います。その成果を全日本でも見せられるように頑張ります。」
RESULT
2022 FIM 世界耐久選手権 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第43回大会 決勝結果
順位ゼッケンクラスチーム名ライダーマシン周回数
1#33EWCTeam HRC長島 哲太
高橋 巧
イケル・レクオーナ
HONDA214
2#10EWCKawasaki Racing Team Suzuka 8Hレオン・ハスラム
アレックス・ロウズ
ジョナサン・レイ
KAWASAKI213
3#1EWCヨシムラ SERT Motulグレッグ・ブラック
渡辺 一樹
SUZUKI
GSX-R1000R
212
4#95EWCS-PULSE DREAM RACING・ITEC生形 秀之
渥美 心
津田 拓也
SUZUKI
GSX-R1000R
210
5#104EWCTOHO Racing清成 龍一
國川 浩道
國峰 啄磨
HONDA210
6#72EWCHonda Dream RT SAKURAI HONDA濱原 颯道
日浦 大治朗
國井 勇輝
HONDA210
7#7EWCYART - YAMAHA Official Team EWCマービン・フリッツ
ニッコロ・カネパ
カレル・ハニカ
YAMAHA209
8#40EWCTeam ATJ with JAPAN POST高橋 裕紀
伊藤 和輝
小山 知良
HONDA208
9#50EWCTEAM KODAMA児玉 勇太
長尾 健史
長尾 健吾
YAMAHA208
10#5EWCF.C.C. TSR Honda Franceジョシュ・フック
ジーノ・リア
マイク・ディメリオ
HONDA208
11#88EWCHonda Asia-Dream Racing with SHOWAモハメド・ザクワン・ビン・ザイディ
ゲリー・サリム
モハメド・ヘルミ・ビン・アズマン
HONDA208
12#54EWCGOSHI Racing黒木 玲徳
田尻 悠人
安田 毅史
HONDA206
13#64SSTKawasaki Plaza Racing Team岩戸 亮介
岡谷 雄太
清末 尚樹
KAWASAKI205
14#44EWCSANMEI Team TARO PLUSONE関口 太郎
奥田 教介
佐藤 太紀
BMW204
15#11EWCWEBIKE SRC KAWASAKI FRANCEランディ・ド・プニエ
エティエヌ・マソン
フロリアン・マリノ
KAWASAKI203
16#806SSTNCXX RACING with RIDERS CLUB伊藤 勇樹
南本 宗一郎
井手 翔太
YAMAHA202
17#85SSTTONE RT SYNCEDGE 4413 BMW星野 知也
石塚 健
中冨 伸一
BMW202
18#52SSTTERAMOTO@J-TRIP Racing寺本 幸司
青木 宣篤
津田 一磨
SUZUKI
GSX-R1000R
202
19#60EWCHonda Hamamatsu ESCARGOT RT中島 元気
田尻 悠人
HONDA202
20#3EWCKRP SANYOKOGYO&RS-ITOH柳川 明
松﨑 克哉
長谷川 聖
KAWASAKI200
21#99EWCADVANCEMC&FOCCLAYMORE EDGE
with DOGHOUSE
眞鍋 将弘
岩谷 圭太
左村 英祐
SUZUKI
GSX-R1000R
198
22#27EWCTransMapRacing with ACE CAFE大石 正彦
平野 ルナ
梶山 知輝
SUZUKI
GSX-R1000
198
23#15SSTTEAM HANSHIN RIDING SCHOOL中村 修一郎
中村 竜也
渡邉 一輝
KAWASAKI195
24#78EWCHonda Blue Helmets MSC Kumamoto & Asaka森 健祐
岡田 寛正
小林 寛明
HONDA193
25#9EWCMurayama. Honda Dream. RT秋吉 耕佑
出口 修
今野 由寛
HONDA193
26#82SSTTeam BIZENSEIKI Kirimoto Techno Works山中 将基
中本 郡
長畑 大二朗
KAWASAKI192
27#74SSTAKENO SPEED.YAMAHA伊達 悠太
阿部 真生騎
菅原 陸
YAMAHA188
28#45SSTYSS Mercury with TKm田島 聖貢
山極 洸士
木村 知博
KAWASAKI187
29#89EWCCLUB NEXT & Honda Dream TAKASAKI片平 亮輔
吉廣 光
大貫 貴彦
HONDA184
30#25EWCHonda Sofukai Suzuka Racing Team亀井 雄大
田所 隼
杉山 優輝
HONDA183
31#112EWCHonda Soyukai Tochigi Racing & Dream RT加藤 高史
本田 恵一
水澤 笑汰郎
HONDA173
32#71SSTTeam MATSUNAGA KDC & YSP NAGOYA KITA松永 修
荒川 雅彦
久野 光博
YAMAHA170
33#69EWCAuto Race UBE KEN RACING YIC新庄 雅浩
可部谷 雄矢
川口 篤史
KAWASAKI169
34#38SSTK'sWORKS RACING安達 勝紀
山内 芳則
中井 恒和
YAMAHA165
NC#42EWCShinshu activation project Team NAGANO櫻山 茂昇
東村 伊佐三
岡村 光矩
BMW160
NC#61EWCTeam de"LIGHT奥田 貴哉
長谷川 修大
片岡 誉
DUCATI155
NC#17EWCAstemo Honda Dream SI Racing作本 輝介
渡辺 一馬
羽田 太河
HONDA153
NC#70EWCOGURA CLUTCH ORC with RIDE IN武田 雄一
横山 尚太
坂本 崇
YAMAHA149
NC#31SST浜松チームタイタン武田 数馬
屋代 原野
村瀬 健琉
SUZUKI
GSX-R1000R
144
NC#41EWCIRF with AZURLANE宮腰 武
川名 拳豊
西村 一之
YAMAHA144
NC#2EWCEVA RT 01 Webike TRICKSTAR大久保 光
佐野 優人
エルワン・ニゴン
KAWASAKI142
NC#34SSTHonda Ryokuyoukai Kumamoto Racing吉田 光弘
小島 一浩
和田 留佳
HONDA139
NC#73EWCSDG Honda Racing名越 哲平
榎戸 育寛
浦本 修充
HONDA139
NC#51SSTT.MOTOKIDS TAKADA I.W. NAC福山 京太
中島 陽向
佐藤 太紀
YAMAHA89
RT#37EWCBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMマーカス・レイターバーガー
イリア・ミカルキク
ジェレミー・グラハニ
BMW96