「旅の思い出にプロの味付け」 松村満の「カメラ講座」 光の見方と構図の決め方

光の見方と構図の決め方

おまたせしました。第四回カメラ講座です。
今回は、前回の「料理の上手な撮り方」で触れました、構図について様々な視点から説明します。
ただし、構図とは感覚的なものでもあり、説明文を読んで簡単に理解ができるというものではありません。
説明文を追うだけではなく、写真に目を留め、そして感じてください。
それでは、早速始めましょう。

■光の見方と構図の決め方

賀曽利さんの納経帳を撮影した作例を見ていただき、光の見方と、構図について考えましょう。

  • 写真:左 (良い例) 右上に適度な光の溜まりと、左右のグラデーションが美しく、納経帳の角度と置き場所が良いです。
  • 写真:右 (悪い例) 人が本を読む目線から撮影していないため安定感がなく、見た目のバランスが悪いですね。

ワンポイントアドバイス:最初は手本となる写真や絵を見ながら撮影を繰り返し、光の強弱を見極め、バランス感覚を学びましょう。

■人物に当たる光の見方とカメラアングル

人物に当たる光の見方とカメラアングル

人物に当たる光の見方とカメラアングル

撮影場所:第39番札所 延光寺

人物に当たる光の見方とカメラアングル

撮影機材: NIKON D90/AF-S DX VR Zoom-Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G(IF)

3枚の写真を見比べてください。
この3枚は全て同じ露出で撮影していますが、カメラアングル(撮影角度)は全て異なります。
顔に当たる光と影をよく見ていただければわかりますが、カメラアングルを変えただけで光の強弱が変化しています。

直射日光が顔に当たらない場所を選び、逆光ぎみの光で撮影をすると、人物の輪郭が際立ち立体感も出てきます。
ピントは手前の目に合わせ、顔に露出を合わせています。
太陽の位置は固定されているので屋外の撮影では、微妙に変化する光の強弱を見極めることが大切です。

ワンポイントアドバイス:光の質が見分けられるようになるためにも、カメラアングルを変えたらすくに露出確認をしましょう。

■お寺 (建築物) の撮影について

お寺 (建築物) の撮影について

お寺 (建築物) の撮影について

お寺 (建築物) の撮影について

  • 良い作例写真 3点
  • 撮影場所:第16番札所 観音寺本堂
  • 撮影機材 写真左上:NIKON D90/AF-S DX Zoom-Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)
  • 撮影機材 写真右上:NIKON D90/AF-S DX Zoom-Nikkor ED 18-55mm F3.5-5.6GⅡ
  • 撮影機材 写真下段:NIKON D90/AF-S DX Zoom-Nikkor ED 18-55mm F3.5-5.6GⅡ
  • 写真:左上 空や屋根を入れるより、地面を多めに入れて撮影します。そうすると、土台がしっかりして安定感ある写真になりますよ。
  • 写真:右上 近くに寄りすぎると屋根の内側ばかりが目立ちますので、建築物から可能な限り離れて長めのレンズで撮影すると良いです。
  • 写真:下段 正面からカメラを構えて左右均等の写真を撮るためには建築物の、ど真中を探すようにします。中心から数センチ外れただけで、レンズのゆがみが写真に出てしまいますからご注意を。

ワンポイントアドバイス:広角レンズを使用すると、水平感覚が鈍ります。もし、水平がわからなくなった時は、 角度を変えて多めに写真撮影をしておきましょう。水準器では出せない「見た目」の水平出しが、味付けのポイントです。

■F値・絞りの決め方

レンズの明るさを示す数値を「F値」、レンズ内にある入光量を調整するための孔(あな)のことを「絞り」と言います。またズームレンズは、焦点距離を変えることでF値が変化するものもあります。市販のレンズ本体には、必ず開放絞り値が印字されていますので、ご自分のレンズF値を確認しておきましょう。
絞りの調整は、F値と同時にピントの合う範囲(被写界深度)も変化しますので、とても重要な部分です。

絞り(F値):F5.6とF16の違い
集合写真などの全域でピントを合わせたい場合、あるいは1個所にピントを合わせて周囲をぼかしたい場合、いったいどうすれば良いのでしょうか?
NIKON標準ズームレンズ18-55mm/ 3.5-5.6を例に取り上げて説明しましょう。

18-55mmズームレンズ55mm側で、絞りをいっぱいに開いたときのF値(開放値)・F5.6で撮影をすると被写界深度が浅くなり、ピント合焦点以外をぼかすことができます。
逆にF16側へ絞り込むにつれ、ピント合焦点を中心に被写界深度が深くなり、広範囲でピントが合うようになります。
もちろん絞りを調整すると、カメラに入ってくる光の量が変化しますので、シャッター速度も調整しなければなりません。

(1/3秒 F16)
(1/3秒 F16)
(1/20秒 F5.6)
(1/20秒 F5.6)
  • 撮影場所:第88番札所 大窪寺
  • 撮影機材:NIKON D90/AF-S DX Zoom-Nikkor ED 18-55mm F3.5-5.6GⅡ
  • 写真:左 F16 にした場合、とシャッター速度は1/3秒とかなり低速になります。私は近くの柱に肩を寄せ、心拍数を抑えて息を吐きながら優しくシャッターを切りました。三脚が立てられない場所では、このような対策で手ブレを防いでいます。
  • 写真:右 F5.6・1/20秒のように、絞りは開放値でシャッター速度が遅い時もあります。撮影時、シャッター速度を確認するクセが付くようになると良いです。
ボケ味を生かすための知識
①同じ絞り値でも、広角レンズより望遠レンズの方が背景はボケます。
②ピント合焦点と背景までの距離が近すぎると、背景はボケません。
③近距離にピントを合わせ、距離の遠い背景を選ぶと背景はボケます。

ワンポイントアドバイス:絞りを絞り込むにつれてシャッター速度が遅くなりますので、ISO設定を高感度に上げたり、三脚を使用するなどして対応しましょう。
露出を手動で調整するのは難しいですから、一眼レフカメラに慣れるまで、使用したい F値 を設定するだけでシャッター速度はカメラにお任せできる Aモード(絞り優先オート)を活用しましょう。

■手ブレを起こすシャッター速度

一般的に50mmレンズ使用時には 1/50秒、200mmレンズ使用時には 1/200秒、500mmレンズ使用時には 1/500秒のシャッター速度が手ブレを起こすかどうかの境界線と言われています。

(1/13秒 F16)
(1/13秒 F16)
(1/100秒 F5.6)
(1/100秒 F5.6)
  • 撮影場所:第88番札所 大窪寺
  • 撮影機材:NIKON D90/AF-S DX Zoom-Nikkor ED 18-55mm F3.5-5.6GⅡ
  • 写真:左 55mmF16で撮影した場合、シャッター速度は 1/13秒 と手ブレを起こす速度領域となります。
  • 写真:右 F5.6で撮影した場合、シャッター速度は 1/100秒 と手持ち撮影が可能になります。

ワンポイントアドバイス:手ブレを起こしていないか随時、液晶モニターで画像確認をしましょう。

■ISO設定とノイズについて

ISOとは、デジタルカメラが受光する感度を表す数値で、高感度設定をすれば一度に取り込める受光量も増えます。そのためシャッター速度を速くしたり、絞りを絞ることができます。低感度にすれば高解像度の仕上がりが期待できます。 ISOをわかりやすい言葉で言い換えるとするなら、任意に画像形成粒子の細かさを選べるものです。
ノイズとは、光を電気信号に変換する時に起きる信号の乱れを表した言葉です。

ノイズ発生の主な原因
高感度ノイズは、ISO設定を高感度にした時の、光量不足などが原因と考えられます。
長時間ノイズは、長時間露光撮影中に変化する温度上昇などが原因と考えられます。
(ISO3200 1/5 F11)
(ISO3200 1/5 F11)
(ISO400 1/250 F11)
(ISO400 1/250 F11)
  • 撮影場所 写真左:道後温泉
  • 撮影機材 写真左:NIKON D90/AF-S DX Zoom-Nikkor ED 18-55mm F3.5-5.6GⅡ
  • 撮影場所 写真右:松山市内 港
  • 撮影機材 写真右:NIKON D90/AF-S DX VR Zoom-Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G(IF)
  • 写真:左 ISO3200まで感度を上げて撮影しました。
    色ノイズ、色にじみ、暗部ノイズを抑えることができる高感度ノイズ低減機能を ON にして撮影したためノイズが目立ちません。これなら、気軽に夜間スナップもイケますね。
  • 写真:右 ISO400で撮影しました。
    光量不足となる日没時の太陽周辺や、空の均一的なグラデーション部分には、ノイズが出てきてしまいます。あらかじめノイズの出やすい環境も知識として覚えておきましょう。
    日没の写真は、ISO400で撮影したため、高感度ノイズ低減機能を ON にしていても無効となり、ノイズが出てしまいます。

高感度ノイズ低減機能とは、ISO800以上の設定をした時に有効となり、ノイズ発生部分をカメラが自動検知して、ノイズ周辺部から正確な色を拾い集めてノイズ発生が目立たないよう修正してしまう画像処理機能です。
また、スローシャッターによる長時間露光撮影を行うと、気温上昇の影響で、長時間ノイズが発生する場合もあります。その時は、長時間ノイズ低減機能を ON にすればノイズを抑えることができますよ。

光量不足や高温多湿などの悪条件下を除き、NIKON D90 の場合は、ISO200設定で最も細かな画像形成粒子で撮影ができます。
ISO200を基準値ゼロとして考え、ISO設定を400にした場合、カラーバランスは崩れず、単純に画像形成粒子ひと粒の大きさが倍となり、ISO800にすると画像形成粒子はさらに倍の大きさとなります。ISO200以下に感度を下げて撮影をする場合も同様に画像形成粒子ひと粒のサイズは大きくなり画像は荒れてきます。
ISO3200で撮影する場合、日中の通常光では最高速シャッター&最小絞り値の露出数値でも、露出過度になる恐れがあります。ISO設定を高感度して常用される際は、露出数値を毎回撮影ごとに確認してくださいね。

ワンポイントアドバイス:まずは、テスト撮影を行いましょう。そして、ISO設定の変化による画像形成粒子ひと粒の大きさを把握した上で、使用したいF値とシャッター速度の組み合わせを考えて、ISO設定をしましょう。

■画面内の空間処理

  • 画面内の空間処理
  • 画面内の空間処理
  • 画面内の空間処理
  • 撮影場所 写真左:第51番札 石手寺
  • 撮影機材 写真右上:NIKON D90/ AF-S DX VR Zoom-Nikkor ED 18-200mmF3.5-5.6G(IF)
  • 撮影場所 写真右上:第56番札 泰山寺 納経所
  • 撮影機材 写真右上:NIKON D90/ AF-S DX VR Zoom-Nikkor ED 18-200mmF3.5-5.6G(IF)
  • 撮影場所 写真右下:浦戸港
  • 撮影機材 写真右下:NIKON D90/ Reflex-NIKKOR 1000mm F11
  • 良い作例写真 3点
  • 写真:左 観音像の右下1/4の面積に明暗差で空間を作り、画面右側に半円の流れを入れ込むことでバランスを整えています。
  • 写真:右上 背景の主要素になる窓枠の入れ方と、画面左下の床に当たる青白い光がアクセントとなり、犬の視線方向に心地よい空間が生まれています。
  • 写真:右下 背景をぼかして野鳥の飛び立つ方向と、はばたく羽が反り返る先に大きな空間を作ることで広い奥行き感が出しています。

ワンポイントアドバイス:ファインダー内の四隅を意識しながら、空間処理の技量を上げていきましょう。

■気持ち良い流れを感じるフレーミング例

  • 気持ち良い流れを感じるフレーミング例
  • 気持ち良い流れを感じるフレーミング例
  • 気持ち良い流れを感じるフレーミング例
  • 撮影場所 第1番札所 霊山寺本堂 龍の天井画
  • 撮影機材 写真左上:NIKON D90/AF-S DX VR Zoom-Nikkor ED 18-200mmF 3.5-5.6G(IF)
  • 撮影機材 写真右上:NIKON D90/AF-S DX Zoom-Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)
  • 撮影機材 写真下段:NIKON D90/AF-S DX VR Zoom-Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G(IF)
  • 写真:左上 画面内を斜めに二分割するようなラインと右奥に見える龍の天井画の存在感、左上と右下の暗部空間が気持ち良い流れを作り出しています。
  • 写真:右上 三角形の気持ち良いパースが付いています。引き込まれそうな奥行き (集結点の位置) が良いです。龍の天井画に照射される光がアクセントとなって、視線もそこへ行きます。
  • 写真:下段 ひらがなの「の」の字のような安定感があり、平面でありながら画面に動きを感じます。右上から左下に向かって筆をおろす (「の」の字の) 流れが良いです。

上記のように見た写真を言葉で表現していくことで、自分の欠点がわかりセンスを磨くことができます。

あとがき

構図の決め方に正解はありません。より良い写真を撮るためには、感受性を豊かにしていくことです。豊かな感受性というものは、すぐに習得できませんが、意識を高めることで大きなヒントを掴めるかも知れません。
手本となるような写真を真似たり、絵画や彫刻に目を向けたり、日常生活の光の質を見て何かを感じたりするのも意識を高めるために必要なひとつの方法です。
また、撮影後に画像を見るための時間を作ることも大切です。画像を見て反省する時に出てくる言葉はテクニックを上げるための「宝」になります。