2018-2019 FIM 世界耐久選手権 第42回 鈴鹿8時間耐久ロードレース
2019年7月26日
予選レポート
ヨシムラスズキMOTULレーシングが5番手。
MotoMap S.W.A.TがSSTクラス最上位で公式予選を終える。
令和元年。第42回目を迎えた鈴鹿8時間耐久ロードレースが開幕した。現在の鈴鹿8耐は、年をまたいで開催されるFIM世界耐久選手権の最終戦に位置付けられていることもあり、レギュラーチームにとっては特に重要な一戦となる。#2 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM(以下SERT)はトップから5ポイント差でチャンピオンシップのランキング2位に位置しており、逆転でのチャンピオンの可能性もあるため気合も入る。

7月9~11日に行われた公式合同テストでは、夏本番には程遠い気温での走行となっていたが、レースウィークに入るといよいよ気温も路面温度も夏本番を思わせるものとなってきた。

コストの削減や、海外チームとのハンデを考慮して採用された、公式合同テスト2回目をレースウィーク中の水曜、木曜に組み込むこととなった今年の鈴鹿8耐。そのままの流れで金曜日の公式予選を迎えるが、突如発生した台風6号の影響か、当日はやや不安定な天候となった。

午前中に行われた2時間のフリープラクティスでは多くのライダーの転倒もあり、赤旗による中断が幾度も行われた。そのなかに、#95 S-PULSE DREAM RACING・IAI(以下エスパルス)の生形秀之も含まれてしまう。残念ながら生形は負傷をしたため決勝を欠場することとなった。

なんとか天気は持ち直し、ドライコンディションのまま予定通り11時50分より公式予選が開始された。ブルー(第一ライダー)、イエロー(第二ライダー)、レッド(第三ライダー)の順番で、20分のタイムアタックが各2回行われ、出走ライダーの予選ベストの平均タイムでグリッドが決定される。

路面温度54℃から始まった予選一回目であるが、ここでも転倒や赤旗中断が続出した。毎年のことではあるものの、思ったようなタイムアタックが出来ないのは鈴鹿8耐ならではの難しさが感じられた。

そのなか、スズキ勢は#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング(以下ヨシムラ)は全員7秒台のタイムに入れる走りを見せ総合5番手につける。生形を除く2人で走ったエスパルスはトミー・ブライドウェルの転倒がありながらも9番手。#71 TK SUZUKI BLUE MAX(以下TK SUZUKI)が14番手。SERTが15番手。#9 MotoMap S.W.A.T(以下モトマップ)がSSTクラス最上位となる18番手。#31 浜松チームタイタン(以下タイタン)が55番手となり、予選2回目でのジャンプアップを狙う。

路面温度45℃と、午前に比べて多少条件が良くなったものの、いまだ33℃という気温の中、15時40分より公式予選2回目がスタートした。

ここでジャンプアップしたのがモトマップ。ほぼノーマルとなるSSTマシンで2人のライダーが8秒台を記録。SSTクラストップのまま、総合順位を16番手にあげるともに、GSX-R1000のポテンシャルの高さを証明することとなった。

最終的な予選順位はヨシムラが5番手。エスパルスが9番手となり、27日に行われるトップ10トライアルに駒を進めた。以下、15番手にTK SUZUKI、16番手 モトマップ、17番手 SERT、53番手 タイタンでグリットが確定した。

PHOTO GALLERY
#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング シルバン・ギントーリ 選手
「1回目の予選ではニュータイヤを装着して7秒台を記録出来たんだ。対して午後の予選ではユーズドタイヤを使って決勝を見据えた走りをしたんだ。どちらもフィーリングは悪くないよ。去年とはチームメイトが違うけど、3人とも良いタイムで走れているし、決勝に向けて良い状態だよ。」
#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング 加賀山 就臣 選手
「天候が読めなかったから早めにアタックしようと思って1回目の予選ではリヤに新品タイヤを入れたんです。でも、ちょうどタイミングが悪くてタイムロスしてしまったのがライダーとしては残念でした。走行台数が多いから、これは仕方ないですよね。バイクとしては、もう少しユーズドタイヤでのラップタイムが安定するようにしたいところですね。でも、決勝は周回遅れもいっぱい出てくるから、その辺の処理によって大きく変わってしまいますが、そこは自分としては結構得意分野です。今年は走ることに専念出来る環境なので、ライダーとしてとても楽しませてもらっています。」
#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング 渡辺 一樹 選手
「一回目の予選が勝負だと思っていたのですけど、路面コンディションやいろいろな要素が重なって、あまりタイムを伸ばすことが出来ませんでした。運良く、2回目もドライでしたし路面温度も下がってきていたので、上手くチャレンジすることが出来ました。欲を言えばもう少しタイムアップしたいところでしたが、これだけ台数が多いので、これは仕方ありませんね。前のグリッドでスタートするほうがもちろん良いですが、8耐ではそれほどこだわる必要はないと思っています。決勝に向けては3人のアベレージも悪くないですし、タフなレースになるとは思いますが強いレースをしたいと思います。」
#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング 加藤 陽平 監督
「テスト段階から決勝に向けて、間違った方向に行かないように時間をかけて取り組んできました。もちろん、毎年そのような組み立てをしているつもりですが、今年は特に時間をかけて誤った方向に進まないように気を付けてきました。欲を言えばまだまだこうしたいという欲求はありますが、8耐を戦える準備は出来たと思っています。もちろん、強力なファクトリーチームに立ち向かうのは並大抵ではありませんし、ファクトリーではないうちが劣っている部分もまだまだあるのは確かです。そのなかで、ヨシムラならではのチャレンジスピリットで、ひとつでも上のポジションを獲得出来るようにベストを尽くして戦っていきたいと思います。」
#2 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM ヴァンサン・フィリップ 選手
「総合の予選順位。そしてラップタイムだけをみれば、それは満足していないよ。でも、うちのチームは予選用タイヤを使っていないから、そこは仕方ないさ。ただ、決勝に向けてのタイムは安定しているし、昨年よりも大きなステップアップをしたから、そこはハッピーなんだ。上手く戦い抜いてチャンピオンシップを勝ち取りたいね。」
#2 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM エティエンヌ・マッソン 選手
「たくさんのテストをしたおかげで、去年よりもマシンのパッケージングが大きくレベルアップしているよ。たしかに予選のタイムは他のチームと比べて良いとはいえないけど、これも全ては決勝に向けてのものだから。3人ともコンスタントに良いペースで走れているから決勝は予選順位とは違ったものになるはずだよ。」
#2 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM グレッグ・ブラック 選手
「昨日は僕が2度も転倒したおかげで、決して良い日ではなかったけど、今日はずいぶんとまとめることが出来たから良かったよ。もちろん、ラップタイムは満足出来るものではないけれど、予選用タイヤを使ったチームも多いだろ?うちは決勝を見据えたセットアップとタイヤにしているから、決勝に関しては自信があるんだ。少なくとも決勝でトップ10には入りたいし、チャンピオンシップを勝ち取りたいね。」
#95 S-PULSE DREAM RACING・IAI トミー・ブライドウェル 選手
「公式練習での生形の転倒にはびっくりしたけど、とにかく大きな怪我でなくてホッとしたよ。予選では、1回目に良いタイムで来ていたところで、最後のシケインでクラッシュしてしまったんだ。あれは惜しかったよ。それで2回目の予選では、ユーズドタイヤで走ったんだけど、それでも8秒フラットで周回できたんだ。これはとても自信になったよ。チームの頑張りもあって、昨日からすごく大きなステップアップを果たせたんだ。決勝に向けてとても良いフィーリングだよ。」
#95 S-PULSE DREAM RACING・IAI ブラッドリー・レイ 選手
「去年の8耐で乗ったヨシムラのマシンとは似ているけど、ちょっと慣れるのに時間を要してしまったんだ。でも、レースウィークに入ってステップバイステップで良くなっているのを実感している。決勝に向けてはもっとマシンに慣れるはずさ。生形が出場出来ないのが残念だけど、トミーと力を合わせて走れば良いリザルトが付いてくるはずさ。」
#95 S-PULSE DREAM RACING・IAI 吉田 志朗 監督
「生形選手のケガは残念でしたけど、とにかく大事に至らなくて良かったです。予選は2人とも頑張ってくれましたし、明日のトップ10トライアルも開催されるかはわかりませんが楽しみです。2人ともイギリスの凄い環境で走っているので、どんな天気になっても安心して見ていられます。昨年以上の成績が出せれば言うことありませんね。」
#71 TK SUZUKI BLUE MAX グレゴリー・ルブラン 選手
「加賀山さんのチームで走れるなんて光栄だよ。GSX-Rには今までもたくさん乗ってきた経験があるけど、慣れるのにはもう少し時間が欲しかったね。8耐は凄く速いライダーとチームが多いから、良い結果を出すのはすごく難しいけれど、リズムは悪くないから皆と力を合わせて決勝ではトップ7には入りたいね。」
#71 TK SUZUKI BLUE MAX アズラン・シャー・カマルザマン 選手
「今回は急遽、加賀山さんのチームから出場することが決まったこともあって、結構タフなウィークを過ごしています。GSX-Rに乗るのも初めてだったので、少し慣れるのに時間がかかりましたが、ステップバイステップでマシンにも慣れてフィーリングは良くなってきています。予選はコースアウトをしてしまったりでグッドなラップタイムは叩き出せませんでしたが、決勝に向けてはもっと良く出来る自信があります。」
#71 TK SUZUKI BLUE MAX 津田 拓也 選手
「少しずつセットアップも進んで、良くなっている感触があるんですけど、それを確かめようと新品タイヤを入れて「よし、行くぞ!」となったところでマシンにトラブルが出てしまいました。タイムを記録出来なかったこともそうですが、マシンのセットアップを確認出来なかったことが残念です。ただ、グレッグは良いタイムを出してくれているので、決勝は3人で力を合わせて良い結果を出したいですね。」
#71 TK SUZUKI BLUE MAX 斉藤 雅彦 監督
「今日の予選ではマシンにトラブルが出てしまって、津田選手とアズラン選手には満足にタイムアタックをさせてあげることが出来ませんでした。彼らの実力があんなものじゃないことはよくわかっているので、チームとしては申し訳なく思っています。しっかり修正して、決勝では気持ち良く走ってもらえるようにしたいと思います。」
#9 MotoMap S.W.A.T. ジョシュ・ウォーターズ 選手
「まさかストックマシンで8秒台が出るとは思わなかったよ。ラップタイムをみて自分でも驚いたくらいだよ。ビッグなチームがタイムシートの自分達より下にいるんだから。もちろんこれはとても嬉しいことだけれど、この先は浮かれ過ぎないでレースモードに頭を切り替えなければならないね。ミスをしないようにコンスタントに走れれば、結果は必ずついてくると思っているよ。」
#9 MotoMap S.W.A.T. ダン・リンフット 選手
「ストックマシンで8秒を出せたことは本当にハッピーだよ。GSX-R1000の素晴らしさ。スタンダードの良さを皆にアピールすることも出来たからね。これは予選用のタイヤでのタイムだから決勝は同じようには走れないけど、10秒から12秒の間でコンスタントには走れるはずさ。それが実現出来ればトップ10も夢じゃない。決勝が楽しみだね。」
#9 MotoMap S.W.A.T. 青木 宣篤 選手
「今日はチームメイトの2人におんぶにだっこ状態で助けられました。でも、8秒は凄いですよね。本当にビックリしました。僕のほうはレースモード・・・ といっても8耐のレースモードですからね。淡々とコンスタントにという走りを心掛けていました。SSTで総合10位以内という大きな目標があったんですけど、なんだか現実味を帯びてきましたね。欲が出てきてしまうところですけど、そこを冷静にうまくコントロールして決勝を戦い抜きたいと思います。」
#31 浜松チームタイタン 武田 数馬 選手
「ウィーク中にマシンにも慣れてきて、調子が上向いてきました。予選でもベストが出せたので良かったです。GSX-Rはストレートが速いので、耐久向きで楽が出来ると感じています。第三ライダーの和田選手とは一緒にマシンを作ってきた仲なので、転倒によって決勝に出られなくなったのは本当に残念なのですが、上林さんと力を合わせて和田さんの分も頑張りたいと思います。」
#31 浜松チームタイタン 上林 隆洸 選手
「トライアウトのレースで転倒して怪我をしてしまっていたので、まずは身体を慣らすことから始めました。和田さんが出場出来なくなって2人で走ることになりましたが、ラクにコンスタントに走れるマシンづくりをしてきたことが助けになりました。ピットワークも昨年よりも速いですし、チームの総合力は確実に去年よりも高まっているので、しっかり結果につなげたいです。」
RESULT
鈴鹿8時間耐久ロードレース 予選結果
順位ゼッケンクラスチーム名ライダーマシン平均タイム
1#21EWCYAMAHA FACTORY RACING TEAM中須賀 克行
Alex Lowes
Michael van der Mark
YAMAHA2'06.619
2#10EWCKawasaki Racing TeamLeon Haslam
Toprak Razgatlioglu
Jonathan Rea
KAWASAKI2'06.633
3#33EWCRed Bull Honda高橋 巧
清成 龍一
Stefan Bradl
HONDA2'07.106
4#634EWCMuSASHi RT HARC-PRO.HondaXavi Fores
Dominique Aegerter
水野 涼
HONDA2'07.183
5#12EWCヨシムラスズキMOTULレーシングシルバン・ギントーリ
加賀山 就臣
渡辺 一樹
SUZUKI
GSX-R1000
2'07.187
6#7EWCYART-YAMAHABroc Parkes
Marvin Fritz
Niccolo Canepa
YAMAHA2'07.309
7#1EWCF.C.C. TSR Honda FranceJosh Hook
Freddy Foray
Mike Di Meglio
HONDA2'07.478
8#090EWCau・テルル SAG RT秋吉 耕佑
長島 哲太
羽田 太河
HONDA2'07.916
9#95EWCS-PULSE DREAM RACING・IAI生形 秀之
トミー・ブライドウェル
ブラッドリー・レイ
SUZUKI
GSX-R1000
2'08.311
10#19EWCKYB MORIWAKI RACING髙橋 裕紀
小山 知良
Troy Herfoss
HONDA2'08.758
15#71EWCTK SUZUKI BLUE MAXグレゴリー・ルブラン
アズラン・シャー・カマルザマン
津田 拓也
SUZUKI
GSX-R1000
2'09.553
16#9SSTMotoMap S.W.A.T.ジョシュ・ウォーターズ
ダン・リンフット
青木 宣篤
SUZUKI
GSX-R1000
2'09.631
17#2EWCSUZUKI ENDURANCE RACING TEAMヴァンサン・フィリップ
エティエンヌ・マッソン
グレッグ・ブラック
SUZUKI
GSX-R1000
2'09.693
35#87EWCTEAM R2CL SUN CHLORELLA今野 由寛
Josh Elliott
Aaron Morris
SUZUKI
GSX-R1000
2'12.681
43#92SSTH.L.O RACING SUZUKIN樋口 耕太
犬木 翼
SUZUKI
GSX-R1000
2'14.312
45#62EWCGSM RACINGVladimir Leonov
Bjoirn Estment
高田 速人
SUZUKI
GSX-R1000
2'14.432
47#27EWCTransMapレーシングwith ACE CAFE大石 正彦
平野 ルナ
木佐森 大介
SUZUKI
GSX-R1000
2'14.922
53#31EWC浜松チームタイタン武田 数馬
上林 隆洸
和田 憲史郎
SUZUKI
GSX-R1000
2'15.539
63#29EWCDOG HOUSE岩谷 圭太
左村 英祐
SUZUKI
GSX-R1000
2'16.497