期待の若手クルーゼルが両レース9位と健闘。
eni FIMスーパーバイク世界選手権第5戦は、ヨーロッパ大会と称してイギリスのドニントンパークで開催された。チーム フィクシィ・クレセント・スズキはジュエル・クルーゼルが第1レース、第2レースとも9位フィニッシュを決める大活躍、その一方でレオン・キャミアが無念の転倒に見舞われるなど、好不調の分かれる決勝レースとなった。
今シーズンがスーパーバイク初参戦となるクルーゼルは、安定感ある走りで順調にルーキーシーズンを消化している。この日は11番グリッドからのスタートだったが、両レースともにスタートダッシュからのオープニングラップで順位を2番手上げ、9位フィニッシュという同様のレース展開を見せた。第1レースは他ライダーとの激しいバトルで始まったが、やがて自身の走りのリズムをつかむと、その後は終始安定してラップを重ねていった。全23ラップに渡り、後方から元ワールドチャンピオンC・チェカ(ドゥカティ)の激しい追撃を受けるも、クルーゼルはペースを崩すことなく順位をキープした。続く第2レースは終盤でタイヤの消耗が余儀なくされる中、ヨシムラによってチューンされたスズキGSX-R1000を上手くコントロールして最後まで積極的な走りに徹した。クルーゼルは両レースの結果に満足していると同時に、特に第2レースは次戦に役立つデータ収集もでき、意義ある内容だったとコメントした。
一方、レオン・キャミアにとっては試練の決勝レースとなった。この日はセカンドロー5番グリッドからのスタートだったが、第1レースはオープニングラップでコースアウトを喫し、順位を15番手に落としてしまう。トップグループに離されまいとキャミアは懸命の追い上げ態勢に入るが、3ラップ目の最終コーナーでクラッシュ、マシンは回転しながらキャミアから離れていき、リタイアを余儀なくされた。幸いキャミアに怪我はなく、歩いてピットへと戻った。第2レースでは順調なスタートからトップグループに加わったが、最終コ-ナーで再び転倒しコースアウト。再スタートはできたものの前のライダーとは10秒離れており、必死の追い上げで数台をパスするも、最後は13位でフィニッシュした。
決勝日の会場は快晴に恵まれ、路面温度は40度まで達した。スーパーバイククラスは両レースでT・サイクス(カワサキ)、スーパースポーツクラスはS・ロウ(ヤマハ)のいずれもイギリス勢が優勝し、地元ファンを大喜ばせた。
第6戦は6月9日、ポルトガルのポルティマオで開催。フィクシィ・クレセント・スズキは一旦ヴァーウッドの本拠地へと戻り、次戦に備える
- ポール・デニング チーム代表
「スーパーバイクで攻略し成績を出すのにドニントンは最も難しいコースのひとつと言われますが、ジュエルが両レースともトップライダー達とバトルしながら9位という結果を出したことは、よく頑張ったと評価します。彼は着実にステップアップしており、チーム全体でジュエルのさらなるレベルアップに何が必要かを掴んでいるので、次のレースがさらに楽しみです。レオンについては、残念な結果でした。実のところ、チームにも今回来場されたスポンサーの方々に対しても大変申し訳ない思いです。セカンドローからのスタートで、レオンの調子もこのところ良かったのでポディウムも狙えるのではと期待していましたが、レオン本来の走りは見られず、第1レースの転倒で怪我がなかったのが不幸中の幸いでした。第2レースは、ゴダードヘアピンでの典型的な「いつのまにか転倒していた」パターンで、それでも再スタートでき、最後まで力強い走りを見せてくれたので良かったです。全体としては、フィクシィ・クレセント・スズキらしさをアピールできる好結果には至りませんでしたが、パフォーマンスのポテンシャルには確かな手ごたえがあり、次のポルティマオでは必ずや今回のデータを生かすことができるでしょう。」
順位 | ライダー | メーカー | Time/gap |
---|---|---|---|
1位 | T・サイクス | カワサキ | 34'10.881 |
2位 | M・メランドリ | BMW | 2.379 |
3位 | S・ギュントーリ | アプリリア | 3.808 |
4位 | J・レイ | ホンダ | 6.760 |
9位 | ジュエル・クルーゼル | スズキ | 27.738 |
DNF | レオン・キャミア | スズキ | 21Laps |
順位 | ライダー | メーカー | Time/gap |
---|---|---|---|
1位 | T・サイクス | カワサキ | 34'06.921 |
2位 | S・ギュントーリ | アプリリア | 8.035 |
3位 | E・ラバティ | アプリリア | 10.738 |
4位 | D・ジュリアーノ | アプリリア | 12.257 |
9位 | ジュエル・クルーゼル | スズキ | 30.501 |
13位 | レオン・キャミア | スズキ | 54.509 |
順位 | ライダー | メーカー | ポイント |
---|---|---|---|
1位 | S・ギュントーリ | アプリリア | 173 |
2位 | T・サイクス | カワサキ | 169 |
3位 | E・ラバティ | アプリリア | 149 |
4位 | M・メランドリ | BMW | 127 |
5位 | C・デイビス | BMW | 112 |
10位 | ジュエル・クルーゼル | スズキ | 55 |
11位 | レオン・キャミア | スズキ | 49 |
順位 | マニュファクチャラー | ポイント |
---|---|---|
1位 | アプリリア | 208 |
2位 | カワサキ | 180 |
3位 | BMW | 175 |
4位 | ホンダ | 96 |
5位 | スズキ | 82 |
6位 | ドゥカティ | 65 |
「調子は良かったのですが、第1レースはスタートが思うように出れず、追い上げにムキになり過ぎました。N・カネパ(ドゥカティ)の前に出ようとしましたが、低速コーナーでのマシンコントロールが思うようにいかず、それでも彼をパスしないことにはトップグループとの差が広がるので、思いきって仕掛けていったのですがコースアウト。再スタートから必死に追い上げようとしたところで転倒しました。第2レースはグリップがベストではなく、BMW勢にパスされ、追い上げましたたがゴダードヘアピンでつかまってしまいました。突然フロントが抜けたようになり、なすすべもありませんでした。マシンを立て直し何とか挽回しようと頑張りましたが、トップグループはすでに遥か前方でした。今日の結果は引きずらずに気持ちを切り替えて、2週間後のポルティマオではベストを尽くします。」
「両レースともトップ10以内でフィニッシュできたこと、特に第2レースは今後に役立つデータも得ることができたので、良い日になりました。レースの最後まで攻める走りができたことも良かったです。序盤からあまり積極的に行ってしまうとかえってミスにつながることもあるので、アラゴンでの経験を生かし、焦らず自分のペースに持って行く展開を心がけました。スタートから全開で攻めていくのも作戦のひとつですが、そこで慎重さを失わないことも大切です。今回は、ほぼベストラップに近いタイムで周回することができ、次につながる内容のレースができたことを嬉しく思います。」