2018-2019 FIM 世界耐久選手権 第42回 鈴鹿8時間耐久ロードレース
2019年7月28日
決勝レポート
序盤トップを快走したヨシムラが5位。エスパルスが8位。
土曜日の悪天候から一変して、鈴鹿サーキットは雲が多いながらもドライコンディションに恵まれた。

8時30分より45分間行われたウォームアップ走行で各チームは決勝に向けた最終調整を行った。

決勝前のメインストレート上では、#2 Suzuki Endurance Racing Teamを40年にも渡り率いてきたドミニク・メリアン監督の引退セレモニーも行われた。同チームで世界耐久選手権を走り、チャンピオンにも輝いたことのある北川圭一氏や、同チームでの参戦経験のある加賀山就臣選手。その他ゆかりのあるチーム関係者や選手の見守る中、国際モーターサイクリズム連盟(FIM)、ジョージ・ヴィエガス会長からはその素晴らしい功績にたいしてねぎらいの言葉が贈られた。そして、スズキ株式会社社長の鈴木俊宏氏からは花束が贈呈された。それを受け、ドミニク監督はこれまでの感謝を述べるとともに、最後のレースを全力で戦うことを誓った。

定刻通り、ルマン式スタートにより11時30分に8時間のレースの幕が切って落とされた。気温30℃。路面温度47℃のコンディションの中、ホールショットを奪ったのはなんと9番グリッドからスタートした#95 S-PLUS DREAM RACING・IAI(以下エスパルス)のブラッドリー・レイ。オープニングラップで少し順位を落としてしまうものの、スズキ勢は#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング(以下ヨシムラ)のシルバン・ギントーリが2番手、エスパルスが3番手、SERTが9番手でコントロールラインに戻ってくる。#9 MotoMap S.W.A.T(以下モトマップ)のジョシュ・ウォーターズはSSTクラストップの13番手。#71 TK SUZUKI BLUE MAX(以下TK SUZUKI)のアズラン・シャー・カマルザマンはスタートで出遅れてしまい、予選順位から大きくポジションを落としてしまう。

レースは3周目のシケインで#1 F.C.C TSR HONDA FRANCEを抜いて、ヨシムラがトップに浮上。そのままレースを引っ張り、一時は後続に約2秒のアドバンテージを作る。その間、SSTクラストップを走っていたモトマップが6周目のS字で転倒してしまう。コース外を使ってピットに戻るが、修復のため大きく順位を落としてしまう。

レース12周目に200Rでの転倒によりセーフティーカーが入る。これにより、トップ集団がふたたび団子状態となり、その後の激しい戦いを予感させた。17周目にセーフティーカーが解除。ヨシムラはトップのまま、集団をリード。順調に周回を重ねるが、スタートから1時間経過した27周目。1コーナーで#21ヤマハの中須賀に。翌28周目に#33ホンダの高橋にパスされる。

1回目のピットインで、ヨシムラは渡辺一樹にマシンを託すが、ほぼ同時のタイミングで入った#1 TSRにも抜かれ4番手に。

その後、ヨシムラは終始5番手を走行。エスパルス。そして年間チャンピオンのかかるSERTは10番手前後を走行する。

そのまま、大きな順位変動がないまま、レースは終盤を迎える。残り30分となったところで、淡々と進んできたレースに大きな変化が訪れる。西コースに雨が落ちてきたのだ。

チャンピオンシップのかかるSERTはそのままの順位でフィニッシュ出来れば1ポイント差でチャンピオンを獲得出来るが、1つでも順位を落とせば獲得はならず。その状況で後続から迫るマシン。懸命に逃げるSERT。チャンピオンをつかみかけた残り5分になった段階で、SERTのマシンは白煙を吐くエンジントラブルでリタイヤ。ドミニク監督の引退レースに華を添えることが出来なかった。

レースはトップの#10カワサキのジョナサン・レイが最終ラップのS字コーナーを過ぎた逆バンク手前の左コーナーで転倒。その後、赤旗掲示でレースはストップされ、そのままレース成立となった。

結果、スズキ勢はヨシムラが5位でフィニッシュ。エスパルスが8位。TK SUZUKIが21位。序盤の転倒から追い上げたモトマップがSSTクラス4位となる27位。浜松チームタイタンが30位となった。

PHOTO GALLERY
#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング シルバン・ギントーリ 選手
「スタートは良かったよ。トップを長い間走れたからね。リスクを背負ってハードにプッシュしたよ。表彰台には届かなかったけど、しっかりフィニッシュしてストロングなパフォーマンスを見せることが出来たんじゃないかな。チームはもの凄くハードに働いてくれたから、去年よりもマシンのポテンシャルが高かったんだ。スズキとヨシムラのファンの前でフィニッシュ出来たことを嬉しく思うよ。」
#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング 加賀山 就臣 選手
「ライダーとしては、1スティント目にもうちょっとタイムを上げられたんじゃないかと思っていて、そこがちょっと悔しいところです。なんとか前を走っている#1 TSRを抜きたかったんですけど、ちょっとしたトラブルもあって、それが出来ませんでした。ただ、しっかり走り切ることができたので、3人のプライドもちょっとは見せることが出来たんじゃないかと思います。悔しいけれど、この順位を受け入れて、胸を張っていきたいと思います。」
#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング 渡辺 一樹 選手
「率直に言って悔しいです。1スティント目ではタイヤ選択のミスもあって、思ったようにペースが上げられませんでした。ただ、今回の8耐ではたくさんのデータが取れたので、そこはポジティブに考えています。加賀山さんとシルバンという経験豊富なライダーと走れて、いろんな課題や見方が出来るようになったので、とても勉強になりました。これを全日本の後半戦にも生かせるようにしたいです。」
#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング 加藤 陽平 監督
「まず、ここ2年はいろいろとあったので、しっかり走り切れて結果が出せたことにホッとしています。ただ、トップ3台との差がはっきりあることを痛感させられました。そこは悔しいですが、それを糧として明日からまた皆で努力していきたいと思います。応援ありがとうございました。」
#95 S-PULSE DREAM RACING・IAI トミー・ブライドウェル 選手
「今年も素晴らしいレースになったよ。2人で戦うのは本当にハードだったけど、チームの皆が懸命に働いてくれて、とても良い状態でマシンに乗ることが出来たんだ。彼らはまるで日本の家族のようなものさ。とても誇らしく思うよ。」
#95 S-PULSE DREAM RACING・IAI ブラッドリー・レイ 選手
「ホールショットは信じられなかったよ。最高の気分だったね。チームと力を合わせてもの凄くハードワークをしたよ。8位というのはプライベートチームとして、とても誇れるものだと思うよ。チームの皆にも感謝したいね。最高の経験が出来たよ。」
#95 S-PULSE DREAM RACING・IAI 吉田 志朗 監督
「ブラッドリーが見事なホールショットを決めてくれてチームの士気が高まりました。その後も安定した走りをしてくれて、8位のポジションを得ることが出来たので嬉しく思っています。これも応援していただいた皆様やスポンサーのお陰と大変感謝しております。今後もチーム一丸となって頑張りますのでご声援お願い致します。」
#71 TK SUZUKI BLUE MAX グレゴリー・ルブラン 選手
「結果はまあまあといったところかな。もちろん、トップ10を目指して走ったんだけど、いろいろと準備不足もあったよね。とにかく無事に終えることが出来て良かったよ。」
#71 TK SUZUKI BLUE MAX アズラン・シャー・カマルザマン 選手
「少しトラブルが出てしまい、途中までだましだましの走行でしたが、転ばずに最後まで走れたのでホッとしています。このような機会をくれた加賀山さんには感謝の気持ちで一杯です。チャンスがあれば、また乗りたいですね。」
#71 TK SUZUKI BLUE MAX 津田 拓也 選手
「ウィーク中にいろいろとトラブルが出てしまい、なかなか集中して走れませんでした。今朝のトラブルでマシンが振られたことで手を負傷してしまい、コントロールするのがとても難しい状態で走っていました。なんとか良い方向性を見つけて、全日本の後半戦は気持ち良く走りたいです。」
#9 MotoMap S.W.A.T. ジョシュ・ウォーターズ 選手
「見てわかる通り僕は非常に悔しい・・・そうさ。本当に言葉が見つからないほどさ。序盤で転倒してしまって皆に迷惑を掛けてしまった。あの時点ですでにSSTの2番手とのギャップを築いていたんだ。それからのこれさ・・・。しかしチームの皆は本当に素晴らしい仕事をしてくれた。証拠として僕たちの速さが予選で証明された。しかもストックバイクで。その後のペースもすごく良かっただけに本当に悔しい。とにかくチームの皆には感謝したい。ノブや他の皆。全員だ。皆本当にいい仕事をしてくれたんだ。だから来年は絶対勝てる。3度目の正直さ。」
#9 MotoMap S.W.A.T. ダン・リンフット 選手
「兎に角8時間耐久レースに出られて嬉しかったよ。僕を迎えてくれたチームは素晴らしかった。そして最後の夜のスティントを任されて本当に楽しかった。ペースもすごく良かった。ノブもジョシュも僕も皆速かったと思う。残念ながら序盤にジョシュのクラッシュがあって9周ほどロスはあったけど、そこから僕たちは全てを出し切る勢いで挽回したさ。素晴らしいレースになったと思う。全然悔しくも悲しくもない。この経験は本当に素晴らしいものだったよ。そしてチームの皆に心から感謝したい。関わってくれた全員だよ。食事を用意してくれた人もいれば、暑い中サインボードを出してくれる人もいれば、マシンをアジャストしてくれた人もいた。鈴鹿8耐っていう素晴らしい体験が出来て本当に楽しかったよ。是非また来年も出たいよ。本当にありがとう!!」
#9 MotoMap S.W.A.T. 青木 宣篤 選手
「今回、自分のタイムが伸び悩んでしまったのですが、ジョシュがリカバリーしてくれて本当に申し訳なかったという気持ちでいっぱいです。本当に謝りたいです。ダンも素晴らしい仕事をしてくれました。今回一緒に戦ってくれたメカニックは本当に諦めない素晴らしいメカニック達でした。本当に素晴らしく、そして激しかった週末でした。出来る事なら、来年もこのパッケージで8耐を戦いたいです。」
#9 MotoMap S.W.A.T. 毒島 誠 監督
「まずは、ライダーが怪我無くレースを終えた事にほっとしています。今回MotoMap S.W.A.T. のライダー達が出したタイムを見て、GSX-R1000のポテンシャルの高さを改めて認識しました。毎年、鈴鹿8耐には熱い気持ちで望んでいますが、青木選手のチームは仲間に恵まれていて本当に羨ましいです。もしも、来年もオファーを頂いてスケジュールが合えば、是非一緒に戦いたいです。」
#31 浜松チームタイタン 武田 数馬 選手
「目標の30位以内が達成出来てとても嬉しいです。体力的には2人で走ることになったので結構つらいところもあったのですが、とにかく力を出し切って、最後までしっかり走ることが出来ました。今年の頭から8耐を目指して遅くまで手伝ってくれた仲間には負担をかけてしまいましたが、なんとか結果が出せたのでホッとしています。ありがとうございました。」
#31 浜松チームタイタン 上林 隆洸 選手
「ようやくノントラブルでレースをフィニッシュすることが出来ました。けがの影響で握力がなくなってしまったのが辛かったですが、チームの皆が頑張ってくれたので自分も頑張りました。30位以内を目標にしてきたので、それを達成できたのがとても嬉しいです。」
RESULT
鈴鹿8時間耐久ロードレース 決勝結果
順位ゼッケンクラスチーム名ライダーマシン周回数
1#10EWCKawasaki Racing TeamLeon Haslam
Toprak Razgatlioglu
Jonathan Rea
KAWASAKI216
2#21EWCYAMAHA FACTORY RACING TEAM中須賀 克行
Alex Lowes
Michael van der Mark
YAMAHA216
3#33EWCRed Bull Honda高橋 巧
清成 龍一
Stefan Bradl
HONDA216
4#1EWCF.C.C. TSR Honda FranceJosh Hook
Freddy Foray
Mike Di Meglio
HONDA215
5#12EWCヨシムラスズキMOTULレーシングシルバン・ギントーリ
加賀山 就臣
渡辺 一樹
SUZUKI
GSX-R1000
215
6#7EWCYART-YAMAHABroc Parkes
Marvin Fritz
Niccolo Canepa
YAMAHA214
7#634EWCMuSASHi RT HARC-PRO.HondaXavi Fores
Dominique Aegerter
水野 涼
HONDA213
8#95EWCS-PULSE DREAM RACING・IAI生形 秀之
トミー・ブライドウェル
ブラッドリー・レイ
SUZUKI
GSX-R1000
211
9#19EWCKYB MORIWAKI RACING髙橋 裕紀
小山 知良
Troy Herfoss
HONDA211
10#72EWCHonda Dream RT 桜井ホンダ濱原 颯道
伊藤 真一
作本 輝介
HONDA211
21#71EWCTK SUZUKI BLUE MAXグレゴリー・ルブラン
アズラン・シャー・カマルザマン
津田 拓也
SUZUKI
GSX-R1000
206
22#87EWCTEAM R2CL SUN CHLORELLA今野 由寛
Josh Elliott
Aaron Morris
SUZUKI
GSX-R1000
205
27#9SSTMotoMap S.W.A.T.ジョシュ・ウォーターズ
ダン・リンフット
青木 宣篤
SUZUKI
GSX-R1000
199
29#27EWCTransMapレーシングwith ACE CAFE大石 正彦
平野 ルナ
木佐森 大介
SUZUKI
GSX-R1000
199
30#31EWC浜松チームタイタン武田 数馬
上林 隆洸
和田 憲史郎
SUZUKI
GSX-R1000
198
37#92SSTH.L.O RACING SUZUKIN樋口 耕太
犬木 翼
SUZUKI
GSX-R1000
196
NC#2EWCSUZUKI ENDURANCE RACING TEAMヴァンサン・フィリップ
エティエンヌ・マッソン
グレッグ・ブラック
SUZUKI
GSX-R1000
210
NC#29EWCDOG HOUSE岩谷 圭太
左村 英祐
SUZUKI
GSX-R1000
103
RT#62EWCGSM RACINGVladimir Leonov
Bjoirn Estment
高田 速人
SUZUKI
GSX-R1000
40